新製品Fidelity CFD : CFDの可能性を解き放つ
従来のCFDから高次精度スケーラビリティへ
ハイコストなプロトタイプテストや実験に頼ることなく、各分野の問題を解決するために、多数のオープンソースや有料の数値流体力学(CFD)ソフトウェアが活用できるようになりました。今日では、CFDはもはや一度に1つの解を得るためでなく、専ら複数の設計テストケースから最適な解を得るために導入されます。顧客体験向上させるためには、スケーラビリティと計算リソースの活用の面で優れた機能を持ち、自動化されたワークフローによって複雑な問題に対応できるCFDソリューションが不可欠であり、CFDは従来のソリューションから高次精度のアプローチに移行しています。
従来のCFDにおける課題
従来のCFDでは、CFDの各ワークフロー(プリ処理、シミュレーション、ポスト処理)において、いくつかの課題を克服することができませんでした。プリ処理では、サーフェスを修正し、水密な形状を作成するために形状クリーンアップツール(水密形状は、サーフェスまたはボリューム間の熱および物質移動のCFD解析で重要)を使用しますが、自動ワークフローでは失敗することがあります。同様に、従来のメッシュ生成技術は、セル数が多くなるため、高レイノルズ数モデルやLESには対応できません。製品性能を正確に予測するために、設計サイクルにおけるCFDシミュレーションの重要性が増す中、問題の背景にある物理法則を読み解くことは、モデル化をすること以上に不可欠になっています。さらに、大規模な発電システムや自動車の問題で流れの詳細をすべて把握するには、大規模な計算リソースを使用する必要があります。ヘテロジニアスCPU/GPUユニット(異種混在のマルチコア)に対応したCFDソルバーは、計算時間を短縮し、大規模計算の実行を可能にします。
スケーラブルなCFDソリューション
Cadence® Fidelity™ CFDソフトウェアは、Omnis™エンドツーエンドCFDワークフローと、Pointwise®レガシーメッシャーを超える技術を提供する、次世代のスケーラブルなCFDソリューションです。我々は、10年以上前からCFD業界において、数値計算アルゴリズム、乱流・剥離流のモデリング、HPCリソースの活用という3つの重要な分野の進歩が停滞していることを認識していました。Fidelity CFDは、この3つの分野すべてで進歩を遂げています。高次精度ソルバーと、OmnisとPointwiseを別々に開発し、それらを1つの独自のプラットフォームに統合したことは、Fidelity CFDのユニークな点です。Fidelityの高次精度ソルバーは従来のフローソルバーの10倍の精度を、Fidelity CFD内のPointwiseソリューションは3倍のメッシュ作成速度の向上を約束します。
Fidelity CFDは、電気自動車(EV)の剥離流れによって生じる騒音の予測や、燃費改善を目的とした、抵抗が支配的な流れの予測など、ターボ機械、船舶、自動車、航空宇宙の領域におけるユニークな問題に対応しています。これを可能にするのは、Fidelity CFDに集約された様々なCFDソリューションです。
図1:CFDワークフローにおけるFidelity CFDのフローチャートと各モジュールの適用事例
機能紹介
これまで未開拓であった業界からの要求により、CFDソフトウェアには自動化と柔軟性の向上によって、ターンアラウンド時間の短縮と、設計課題の解決のための人的スキルの制約を補うことが求められています。Fidelity CFDは、数十年にわたる開発によって生まれた機能を備え、自動化されたCFDワークフロー、高次精度解析、CPUおよびGPU計算による大規模計算への対応などにより、比類のないソリューションを提供することを目的としています。
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複雑形状でも各ワークフローでの操作が容易に
形状修正、計算領域の設定、メッシュの精細化、解の初期化、結果の可視化、これらはすべてCFDワークフローの一部です。従来のCFDソリューションでは、複雑形状や高い曲率を持つ形状の修正、およびメッシュ作成および解析は時間の要する作業でした。Fidelity CFDでは、設計要件や計算機の制約に応じてワークフロー全体を拡張・自動化し、高精度で信頼性の高いソリューションを実現することができます。
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[形状修正]
Fidelity CFDのプリ処理は、様々なCADフォーマットに対応します。形状の詳細を損なうことなく、必要なユーザースペックを満たすことが可能です。形状修正によってシミュレーション時間を短縮することができますが、複雑な形状の場合は数日から数週間を要することがあります。
Fidelity CFDでは、穴や空洞を埋める作業は数分から数時間で完了するので、効率的な設計プロセスを実現するための時間とリソースを節約することができます。
(a) 商用プリ処理ソフトウェアで穴埋め作業に要する時間:1週間
(b) Fidelity CFDで穴埋め作業に要する時間:1時間図2:CADやSTLファイルから水密形状を得る作業を最短1時間に短縮
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[高次精度カーブドメッシング]
高次数の多項式曲線を用いた高次精度メッシュは、少ないセル数で線形メッシュよりも高精度に形状を捉えることができ、複雑形状に適したメッシュ作成技術として知られています。Fidelity CFDでは、既存の線形メッシュを高次精度カーブドメッシュに変換することができます。これは数千のCPUとGPUによって実行されます。
図3:線形メッシュを補間し、セル数を削減。メモリ使用量を削減し、かつてない高精度を実現 -
[スケール解像シミュレーション]
Fidelity CFDのスケール解像シミュレーション(SRS)では、使用可能な計算リソースと要求される精度レベルに応じて、乱流モデルを自由に選択することができます。Fidelity CFDのSRSは、従来のレイノルズ平均ナビエ・ストークス(RANS)、非定常RANS(URANS)、ラージ・エディ・シミュレーション(LES)から、LES-壁解像 LES(LES-WRLES)と直接数値シミュレーション(DNS)まで対応範囲を拡張する予定で、シミュレーション結果の精度を向上させることができます。
図4:Fidelity CFDのSRSは従来型から高次精度解析用の乱流モデルまで拡張
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高次精度ソリューションによる解析の高速化
高次精度ソリューションは、最小限の仮定で実世界の物理法則を捉えることで、標準的なシミュレーション手法を超える精度を実現します。次数3以上の精度を持つ数値計算法が高次精度とみなされます。高次精度プロダクトは、高次精度メッシュ作成、高次精度ソルバー、シミュレーション結果からデータを自動生成する高次精度ポスト処理で構成されています。高次精度プロジェクトの立ち上げは、既存のOmnisからわずか1分程度で行うことができ、特別な専門知識は必要ありません。ユーザーは、高次精度ソルバーを選択する前に、計算コストの低いソルバーでシミュレーションを初期化することで、高次精度ソルバーにかかる計算時間を短縮することができます。高次精度ソルバーは、大規模なCPUやGPUでスケールアップできるコードアーキテクチャを採用しています。高次精度ソルバーの数値プロパティはSRSに対応しており、RANSからDNSまでの乱流モデルに対応しています。高次精度ソルバーを使用することで、標準的な流体ソルバーの最大10倍の精度を得ることができます。高次精度ソルバーでは、従来の手法よりも少ない自由度で同じ精度で計算することができ、同じ計算コストでより高精度な解を得ることができます。
統合されたエンドツーエンドプラットフォーム
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CFDワークフロー全体を1つのインターフェイスで実現
形状修正 > メッシュ作成 > 解析 > ポスト処理 > 最適化 -
高度な自動メッシュ作成
ジオメトリの複雑さに対処し、メッシュ作成を3倍高速化、かつてない精度のシミュレーションを実現 -
各適用分野に特化したソルバー
業界標準に準拠した組み込みテンプレート -
最高クラスのAPI
外部ソルバーや解析ワークフローを統合するための完全な柔軟性
まとめ
Fidelity CFDは、同じ商用コードを使用しながら、数値アルゴリズム、SRS、HPCを進化させ、CFD技術に大きな飛躍をもたらしました。標準的なCFD技術から高次精度のソリューションへのアプローチを簡素化する、統合されたCFDプラットフォームを提供します。ユーザーは、要件と所要時間に基づいて適切な精度を柔軟に選択できるようになりました。Fidelity CFDは、同じ精度で実行時間を短縮するか、同じ実行時間で精度を向上させることを約束します。
Numecaセールス プリンシパルアプリケーションエンジニア
内藤 大貴
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