プリント基板設計ツールAllegro/OrCAD:SPB17.4-2019 QIR3
最新機能の一部をご紹介
Allegro®/OrCAD® 17.4-2019は、その名の通り2019年にBaseバージョンがリリースされました。その後、QIR1 (HotFix007) が2020年5月に、QIR2 (HotFix013) が2020年12月にリリースされ、その都度さまざまな機能の追加や改善が行われてきました。そして、今年7月、さらなる機能強化を行ったQIR3 (HotFix019) がリリースされました。
今回は、QIR3でリリースされたAllegro PCB Editor / Allegro Package Designer Plusのいくつかの新機能を、その背景も交えてご紹介いたします。
なお、QIR3の新機能全般について記載された、QIR3 What’s New 日本語のドキュメントがCadence Online SupportのSPBホームページ内、リリース情報に公開されています。また、9月に開催されたオンラインセミナーの資料及び録画も同じページにてご参照いただけますので、ご覧ください。
Fastモードのパフォーマンス改善
17.4 QIR2でDynamic Shapeのモードが大幅に改善されたことはご存じでしょうか?今回のQIR3では、QIR2から採用されたFastモードでのパフォーマンスが、さらに改善されました。
改めて、Dynamic Shapeの概要と、現在の最新のShapeモードをご紹介しましょう。
Dynamic Shapeは、ピンやCline等のオブジェクトがShapeとオーバーラップした際、異ネットのオブジェクトを認識して自動的にVoidを生成するものです。部品やビア、Clineを移動すると、これに追随してShapeのVoid形状が更新されます。但し、数多くのオブジェクトに対して複雑な形状のVoidを正確に再構成する処理は、瞬時に完了…とはいかず、時に設計者をイライラさせることもあります。
そこで、Dynamic Shapeには、常に正確にVoid形状を更新する”Smooth”モードの他に、編集作業の中での変更箇所周辺のみVoid形状の更新を行う”Fast”モード、Dynamic Shapeの特長である動的なShape更新そのものを停止する“Disable”モードが用意されています。
デザインがまだFixしていない段階ではClineの位置なども頻繁に変わることが予想されるため、Fastモードを利用して、ストレス無く作業を行っていただくのがお勧めです。
QIR3ではFastモードのパフォーマンスが更に向上し、Smoothモードと比較して最大100倍の速さでShapeの更新が行われるようになりました。 まだFastモードを体験されていないお客様は、このサクサク感をぜひ一度お試しください。
注)Fastモードで生成されているShape形状は、完全に正確なものではありません。アートワーク出力前には、必ず”Update to Smooth”を実行してください。
GPU対応によるレンダリング
PCBやパッケージのデザインは非常に複雑なため、その表示処理にはそれなりのCPU負荷がかかり、処理時間もかかります。また、繊細な形状の表示は必ずしも正確ではない場合があります。 QIR3では、Allegro PCB Editor及びPackage Designer PlusでNVIDIA社のGPUがサポートされました。GPUの利用により、グラフィックのレンダリング精度も描画時間も飛躍的な向上が期待できます。
複雑なデザインを設計している間、個々の表示更新にかかる時間は数秒だとしても、表示更新は編集作業の中で無数に繰り返され、その積み重ねは膨大な時間になります。パニングの遅延やグラフィック精度にストレスを抱えているようでしたら、GPUの利用をご検討ください。
Reuse Moduleに関する強化
皆さんはAllegroでモジュールデータ”.mdd”をお使いですか?
モジュールデータは、レイアウトの一部分をグループ化したものです。AllegroのDesign Reuseフローにおいては、回路図の機能ブロックに対応したレイアウトをモジュール化し、回路ブロックとモジュールをセットで取り扱います。その回路ブロックをデザイン上に配置後にレイアウト設計を行う際には、機能ブロック内で使われている部品の配置やネットの配線を一から行う代わりに、既に出来上がっているレイアウトモジュールを配置することができます。(機能毎のデザインをリユース(再利用)するフローなので、”Design Reuse”フローと呼ばれます。)
モジュールデータを利用するもう一つのシーンが、Place Replicateの利用です。Design Reuseフローの方では、回路ブロックとの対応付けを持った完成済みのレイアウトモジュールを使用しますが、Place Replicateではもっと手軽なリユースが行われます。
レイアウトデザインにおいて、その種類によってはほぼ同じパターンの回路を複数使用することがありますが、回路設計においてこれらが必ずしも機能ブロック化されているわけではありません。そのような場合でも、同じ配置・配線を繰り返し行いたいときに、Place Replicateが利用できます。この機能では、最初にマスターとなる1回路分の配置・配線を行い、Placement Editモード内のPlace Replicate Createコマンドで.mddファイルとして記録します。次にPlace Replicate Applyコマンドを実行して生成済みの.mddファイルを呼び出し、このマスターに倣って配置したい部品候補をまとめて選択すれば、適切な部品が自動的にピックアップされ、.mddと同じ相対位置、同じエッチパターンでボード上に置けるようになります。この機能の便利な点は、後から変更が生じた時にも、マスターの1回路を修正してからリユースされた他の回路に反映することができるという点です。
さて、今回のQIR3では、この.mddファイルに関して以下の機能強化が行われました。
- モジュール内のShape形状を保護するためにDynamic ShapeをStatic Shapeへと自動変換する機能
- モジュール内のデータを保護するためにデフォルトでロックを掛ける機能
- モジュール内のデータの内、特定のオブジェクトをモジュール配置の際に除外する機能
- モジュールを丸ごと別のモジュールにリプレイスする機能
今回はAllegro PCB Editor / Allegro Package Designer Plusの新機能からほんの一部のみをご紹介しましたが、この他にもAllegroの回路図エントリツールであるAllegro System Capture、デザイン管理を行うCadence® Pulse™、OrCADファミリーのOrCAD Capture/OrCAD Capture CISやPSpiceといったそれぞれのツール群において、機能の追加・改善が行われております。
冒頭でご紹介したCadence Online Support – SPBホームページ内の各種資料をぜひご参照ください。
新しい機能についてはブログの方でも随時ご紹介して参りますので、ブログのご購読もよろしくお願いいたします。
システムセールスチーム
吉崎 郁恵
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