次世代仮想プラットフォーム Helium Virtual and Hybrid Studio
最先端のテクノロジとケイデンス検証プラットフォームとの融合
2021年9月に、ケイデンスは独自のテクノロジを組み込んだ仮想およびハイブリッドプロトタイピングを加速する検証プラットフォームCadence® Helium™ Virtual and Hybrid Studioを発表しました。本稿では、Heliumの機能と新しいテクノロジをご紹介します。
ケイデンス検証プラットフォームとの融合
新しいHelium Studioは、ハードウェア/ソフトウェアの協調検証とデバッグのために開発された次世代の仮想プラットフォームです。Palladium™ Z1及びZ2 Enterprise Emulation Platform、Protium™ X1及びX2 Enterprise Prototyping Platform、Xcelium™ Logic Simulatorなどケイデンスの検証エンジンと統合され、仮想モデルとRTLを混在させることもできます(図1)。
図1 Helium Virtual and Hybrid StudioとケイデンスVerification Solution
RTLの準備ができていない場合でも、ソフトウエアモデルだけ構成される仮想環境や一部モデルをRTLとして組み込んだハイブリッド構成上で、組み込みソフトウェア/ファームウェアを検証することによりシステム開発を加速することが可能です(図2)。
図2 Heliumとケイデンス検証プラットフォームの組み合わせ
Helium Virtual and Hybrid Studioの特長
モバイル、車載、ハイパースケールコンピューティングアプリケーションなど次世代デザインの開発においては、デザインを確実に成功させ市場投入期間の目標を達成するために、シリコン開発前のプラットフォーム上でソフトウェアの確認を行う必要があります。 これらのアプリケーションを考慮し、Helium Studioはユニークな4つの機能を有しています(図3)。
図3 Helium Studioの機能
- Virtual studio: 迅速なcorrect-by-construction (検証、修正を繰り返し、系統的に開発を進める) によるGUIベースのプラットフォーム構築に対応し、早期ソフトウェア立ち上げが可能。プラットフォーム構築後は、Virtual studioを使用してソフトウェアスタックおよびハードウェアデザインの実行とデバッグが可能
- Hybrid studio: 通信チャネルを最適化してスループットを最大化し、PalladiumおよびProtiumプラットフォームに緊密に統合されているハイブリッドアダプター、トランザクター、スマートメモリーの豊富なライブラリを活用することで、迅速にハイブリッド構成を作成することを可能にするシステム。新しいgearshift技術によって仮想モデルからRTLへソフトウェアの立ち上げをホットスワップすることを可能とし、速度を求める場合は高速に、精度を求める場合はRTL エンジンで高精度な検証が可能
- Virtual model library: 最新のArm® technology modelポートフォリオを備えた、Armv9-Aに対応する、包括的な仮想モデルライブラリを提供。そのライブラリを利用することで、設計者は最新のLinuxおよびAndroidオペレーティングシステム上で起動可能な仮想およびハイブリッド環境の複数のリファレンスプラットフォームやスタータープラットフォームにアクセス可能で、新規プラットフォームの立ち上げを加速することが可能
- Embedded software debug: 組み込みソフトウェアの包括的かつ共通のマルチコア、マルチプロセスデバッグ環境を提供し、仮想プラットフォームとRTL プラットフォームで同時に実行されるソフトウェアに単一のデバッガーを使用することによりソフトウェアを制御、可視化することが可能。仮想およびRTLランタイムエンジンとソフトウェアエンジンが緊密に統合されており、ハードウェアとソフトウェアの同時デバッグが可能
(Heliumプレスリリースより)
Heliumが解決した仮想プラットフォームの課題
- ソフトウェアデバッガー
Helium Virtual and Hybrid Studioでは、Palladium、Protium、Xceliumの検証プラットフォームと統合されています。これら検証プラットフォーム全体に渡ってEclipseベースの統合ソフトウェアデバッガーを提供します。すなわち、仮想プラットフォームで実行されるソフトウェアだけでなく、RTLモデルとして実行されるソフトウェアも、この単一のデバッガーを使用して検証できます。 - 仮想プラットフォートとハイブリッドシステム
仮想プラットフォームのもう1つの課題は、RTL設計されたモデルの扱いです。RTLと別に仮想用モデルを作成する必要があり、仮想環境構築において利用者の大きな負担になります。
ケイデンスでは、2013年にPalladiumシリーズと仮想プラットフォームを融合したハイブリッドシステムを業界に先駆けて発表し、大規模SoCにおけるソフトウェア・ファームウェア開発を支援してまいりました。しかし、ハイブリッド環境で実行されるソフトウェアは、仮想環境専用のプロセッサモデルで実行され、タイミングが実装されていないか非常にラフなタイミングしか考慮できません。 - 新たな進化: Gear Shift
仮想モデルからRTLへソフトウェアの立ち上げを切り替える技術です。このGearshiftを使用すると、高速なソフトウェア実行は仮想プラットフォームで、その後、RTLに切り替えて、Palladium上でサイクル精度の検証が継続できるようになります。RTL切り替え後は、Palladiumでサポートしている電力・性能解析など、各種ソリューションがサイクルレベルで解析・デバッグできます。
まとめ
本稿では、2021年9月に発表されましたHelium Virtual and Hybrid Studioの概要と特長的な機能についてご紹介しました。今後、Heliumによる成功事例なども紹介する予定です。
夏井 聡
日本ケイデンス テクニカル・セールス・ディレクター
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