サインオフRC抽出ツールQuantusの技術紹介
~P&RツールInnovusと組み合わせて使う意味とメリットとは!?~
プロセスの高微細化が進むにつれ、考慮するべき項目や処理量などが増大しデザインインプリメンテーションの期間が増加傾向にあり期間の短縮が求められています。デザインインプリメンテーションにおける期間増加要因は複数ありますが、その中のひとつとしては、寄生RC抽出のエンジンや条件がインプリメンテーション時とデザインサインオフの段階で異なりイタレーションを生むことが考えられます。
この記事では、弊社のサインオフ寄生RC抽出ツールであるCadence® Quantus™ Extraction Solutionのエンジンをデザインインプリメンテーション時から用いて、後に発生しうる差分を最小化する技術と、ECOによる変更箇所のみ再抽出を行うインクリメンタル抽出による処理時間短縮についてご紹介します。
Innovus + Quantus Extraction
Innovus™ Implementation Systemではデザインインプリメンテーション時の寄生RC抽出にQuantusエンジンを選択することができます。サインオフと同一のエンジンを用いることで後の差分抑制が期待できます。
Innovusでは3種類のQuantusの寄生RC抽出モードを指定でき、ともに同一のテクノロジファイル(qrcTechFile)を使用します。
1) TQuantus
サインオフ Quantusに比べて約2~3倍高速に動作しますが、簡略化により高速化しているため精度はサインオフレベルではありません。デザインの初期段階など厳密な寄生RC抽出を必要としない場面で用いることで高速処理が期待できます。
2) IQuantus
サインオフQuantusのエンジンをInnovusの中にIntegrateしたもので、サインオフレベルの寄生RC抽出を行います。
3) Signoff Quantus
Innovusから、外部のスタンドアロンQuantusを呼び出し、寄生RC抽出を行います。PATH指定したスタンドアロンQuantusを実行するため、後のサインオフの寄生RC抽出で用いる版数を指定でき、また実行時の設定なども同じにすることができます。
Virtual Metal Fill
デザインインプリメンテーションの終盤ではデザインにMetal Fillの挿入を行いますが Metal Fillによる寄生RC結果への影響は大きく、挿入直後ではタイミング収束のために大きな変更が必要となる場合があります。QuantusのVirtual Metal Fill機能により、Metal Fillの影響を想定した寄生RC抽出行い、実際のMetal Fill挿入時との差分を最小化します。
Virtual Metal Fillは仮想的な処理を行うため挿入時間はかかりません。
上記で紹介したInnovus + Quantus ExtractionのTQuantus/IQuantus/Signoff QuantusのすべてでVirtual Metal Fillを使用可能なため、デザインインプリメンテーションの早い段階からMetal Fillの影響を想定した寄生RC抽出が可能です。
Incremental Extraction
Quantusには、デザインの変更箇所のみ再抽出を行うIncremental Extractionの機能があります。デザインの変更箇所は自動認識であるため実行者は変更箇所の情報をツールに与える必要はありません。デザイン中の全ネットを再抽出するのに比べ大幅な処理時間の短縮が期待できます。
上記で紹介したInnovus + Quantus ExtractionではIQuantus/Signoff QuantusでIncremental Extraction機能が利用可能です。
まとめ
Innovus + Quantus Extractionによりデザインインプリメンテーションにおける寄生RC抽出エンジンとサインオフ寄生RC抽出エンジンの違いによる差分を軽減し、Virtual Metal Fillを用いることで後の実際のMetalFill挿入による差分も軽減可能。また、Incremental Extraction機能により変更ネットのみ再抽出を行うためイタレーションの一回当たりの抽出時間は変更量が減るに従い減少していきます。
これらのQuantusの機能を組み合わせ、デザインインプリメンテーションを効率化しデザイン期間の短縮が期待できます。
フィールドエンジニアリング&サービス本部
只木 浩一
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