デジタル設計効率を大幅に改善する共通ユーザーインターフェースStylus Common User Interface
近年の大規模化、高機能化したLSI開発において、設計イタレーションによる納期遅延は大きな課題の1つとなっています。 論理合成ではPPA(Performance-Power-Area)要求を満たしてはいるものの、レイアウト工程でのタイミング収束が困難であったり、配線混雑が発生する事により、RTL設計まで戻って再度改善検討が行われるケースは珍しくありません。その為、論理設計者がレイアウトも考慮したデザイン収束性を早期に確認する1つの手段として、フィジカル合成への期待が年々高まってきています。
ケイデンスが提供している論理合成ツールGenus™ Synthesis Solution(以下Genus)では、フィジカル合成機能であるGenus-Physicalをサポートしており、例えば下記の機能によりTAT改善、PPA改善、そしてユーザビリティ改善と、従来に比べ性能は格段に進化しており、使い易くなっています。
- Early Physical: 論理最適化の初期段階であるジェネリックゲートの状態から物理情報を考慮することにより、長距離配線や配線混雑を早期に判定し、レイアウトでの問題発生を緩和する論理構造を生成し、ベストなアーキテクチャを構築します。
- Predictability: ケイデンスのレイアウトツールInnovus™ Implementation System(以下Innovus)と共通の配置エンジン、概略配線エンジン、寄生容量抽出エンジン、遅延計算エンジンが統合されています。Innovusと高い相関性を持つことから、Genus-Physicalによりレイアウトを含めたPPAを早期に確認でき、レイアウトとのイタレーションなく解析・改善を検討できます。
- Stylus Common User Interface: ケイデンスのインプリメンテーションツールで共通の設計環境、ユーザーインタフェースを持つ事により、設計生産性が大幅に改善されます。
ケイデンスでは、各ツールでの最高品質を目指すと共に、トータルフローとしての設計生産性向上にも力を入れています。 その取り組みの1つがStylus Common User Interface (以下、Stylus) です。
Stylusは、ケイデンスのインプリメンテーションツール間で共通の実行環境、コマンドおよびレポート体系を提供することにより、ツール間の連携を高め、ユーザーの作業効率を大幅に高めるために構築されたユーザーインターフェースです。
- 共通のコマンドやオプション体系
- 共通のデータベースアクセス
- 共通のセットアップファイルを使用したデザインの初期設定
- 共通のGUI
- 共通のレポートフォーマット
- 共通のフローキット、HTML形式での結果測定
例えば、MMMC(Multi-Mode Multi-Corner)セットアップファイルは、Genus-Innovus-Tempus™間で全て共通化されており、同じセットアップファイルを使用できるため、各ツールでの個別指定は必要なく、ユーザーミスも防ぐことができます。
また、データベースアクセスコマンドであるset_dbやget_dbなども全て共通化されており、Genusで作成した便利スクリプト(デザインプロファイルやデザイン解析スクリプトなど)をInnovusやTempusでも利用可能となり、設計者固有に作成した社内資産の共有・蓄積も可能となります。 レポートフォーマットも共通化されています。
そして、実行結果確認もHTML形式でまとめて表示され、ひと目で結果の良し悪しが確認できます。各ツールの結果のみでなく、全ての工程の結果を統合してHTML化できるため、工程間の結果の比較、推移の確認が容易になります。
更にカスタマイズ可能なフローキットにより、様々なフローをリファレンスフローとして運用することが可能です。
Genus-Physicalとして更なるTAT高速化や大規模対応、PPA改善はもちろんこと、今回ご紹介したようなユーザーインターフェースの向上にも取り組んでおりますので、ぜひ一度、触ってみて頂き、その性能と使い勝手を体感してみませんか?
フィールドエンジニアリング&サービス本部
岡村 亮介
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