Success Story
ヘルスケア エンタープライズDCとケイデンス
北米にある大手ヘルスケア企業がデジタルツイン技術を用いてデータセンターの最適化に成功
Overview
ハイライト
課題
米国にある大手ヘルスケア企業は、耐障害性を損なうことなく、未使用のキャパシティを有効活用する方法を模索していました。絶えず変化するビジネス需要に対応するため、IT分野への投資として従来のデータセンターを刷新すべきだと判断しました。
同社は、電力、冷却、空きスペースを効率よく活用し電力密度の増加に対応できる「予測ツール」を求めていました。そして機密性が高いヘルスケア企業であることから、これらの目標を達成できる「フェイルセーフな方法」を必要としていました。
解決策
同社は、熱流体解析 (CFD)を使用して従来のデータセンターを刷新するプロジェクトを開始しました。このプロジェクトでは、ケイデンスが提供するCadence Reality DC Digital Twin(旧6SigmaDCX)のCFDデータに基づいて、IT機器の配置検討と施設管理の効率化を図ると共に、新しいレイアウトの検証を同時に進めることができました。
このソリューションを使った解析結果によると設置効率を見直すことなく高密度な機器を導入した場合データセンターのキャパシティが大幅に減少することが分かりました。現在、同社のデータセンターは、キャパシティを40%使用して稼働しています。同一条件で今後予定しているIT機器の実装をCadence Reality DC Digital Twinを使用して検証しました。結果、この計画を実行した場合、キャパシティを100%使用すると、施設を安全に運用することができず、全体の80%のキャパシティを使った運用が「機器が故障しない運用の限界」であることが判明しました。
同社の設計部門は、Cadence Reality DC Digital Twinを使用して、コスト回避の観点から配置場所の決定方法を定量化し将来データセンターのキャパシティが低下しないよう新しいIT機器の最適な設置場所を決定しました。
この方法はIT負荷の電力閾値がキャビネット当たり10kW以上となった場合に実施されます。
エンタープライズDCの担当部門は、Cadence Reality DC Digital Twinを使って、データセンター内に設置するIT機器について3つのシナリオをモデル化し検証しました。各シナリオは、重量、面積、電力、冷却能力、相バランスなど、事前に設定された基準に基づいて評価を行います。
データセンター内のインフラがある3つの異なるエリアを対象として、各エリアに96kWのIT機器を導入して検証しました。Cadence Reality DC Digital Twinを使用して、各シナリオとその結果の指標を評価しました。その結果、以下のことが実証されました。
要件 | オプション1 | オプション2 | オプション3 | |
---|---|---|---|---|
必要な電力 (kW) | 96 | 96 | 96 | 96 |
必要な冷却能力 (kW) | 105 | 105 | 105 | 105 |
必要風量の増加 (kW) | 11260 | 11904 | 12307 | 11104 |
許容温度で動作するIT機器の割合 (%) | 100 | 91.7 | 9.75 | 100 |
故障のリスクがあるIT機器の割合 (%) | 0 | 0 | 0 | 0 |
オプション3は、他のオプションよりも少ない風量にも関わらず、IT機器が許容温度の範囲内にあることを示しています。したがって、このシナリオは安全であるだけでなく、データセンターのインフラをより効率的に使用することができます。この結果から、この企業は日々の運用と長期的かつ詳細なデータセンタのーのパフォーマンスに関連性があることを確認しました。IT機器の稼働を止めずに未使用のキャパシティを有効活用できるようにするこの手法は、現在、同社の通常業務に取り込まれています。
システムおよびサービスをコロケーションから、自社のデータセンターへ移行したことで、このヘルスケア企業は年間約30万ドル(約4400万円)のコスト削減を実現しました。※2023年11月現在
すべての配置は同様に検証され、設置されたIT機器やその周辺に与える影響と、データセンター全体に与える影響の両方を把握できます。このプロセスにより、同社は高密度な配置による問題の核心ともいえる冷却能力の「非効率性」を低減し稼働時間を最大化できるのです。
このプロジェクトを成功させることで、この企業は以下のことを実現しました。
まとめ
この企業はCadence Reality DC Digital Twinを用いて、従来のデータセンターを刷新し、未使用のキャパシティを有効活用できるようになりました。また、電力密度の増加に伴い発生する、電力、冷却、空きスペースの問題を克服しました。同社は、仮想空間でシミュレーションすることで、耐障害性を損なうことなく、これらの目標を達成することができました。
またコロケーションから自社のデータセンターへ、システムおよびサービスを移行することができたことで、年間約30万ドル(約4400万円)のコスト削減に成功しました。
データセンターの日々の管理でCadence Reality DC Digital Twinを使い、将来のIT機器導入の計画を立てたことで、変化の影響を予測し、電力密度が常に増加しているオンプレミス施設でのリスクを低減しています。